BACKGROUND
経験を積むほど、エンジニアの価値が見えにくくなる
未経験者を採用し、育成しながらエンジニアとして成長してもらう組織では、経験を積むにつれて新しい課題が生まれることがあります。
営業やエンジニアサポートを担う側がソフトウェアQAの専門知識を持っていない場合、エンジニアの専門性が高くなるほど、その経験やスキル、強みを適切に理解することが難しくなります。
その結果、本人が持つ価値を顧客への提案や単価に十分反映できず、待遇とのギャップや離職リスクにつながる可能性もあります。
当初TAQTは、QAエンジニアの経験やスキルを見る際の観点を共有するため、実際のエンジニアとの面談を行っていました。
しかし、それを繰り返すだけでは、TAQTや特定の担当者に知識が残り、組織として再現できる仕組みにはなりません。
この暗黙知を、仕組みにできないか。
そこからQTISの実験が始まりました。
HYPOTHESIS
TAQTが見ているものを、言語化する
TAQTがエンジニアのスキルシートを見るとき、単に経験年数や使用したツールだけを確認しているわけではありません。
どのような環境で、どのような役割を担い、どのような経験をしてきたのか。その経験からどのようなスキルや強みが考えられるのか。そして、スキルシートだけでは分からないことは何か。
こうした観点を言語化できれば、AIを使ってスキルシートの一次分析や、本人に確認したいことの整理を支援できるのではないかと考えました。
そこで、エンジニアを見る際の観点を整理し、評価項目やスキルレベルなどをTAQT Frameworkとして定義しました。
EXPERIMENT
暗黙知とAIを組み合わせ、プロトタイプをつくる
構想の整理にはChatGPTを活用し、Claude Codeを使ってMVPとなるプロトタイプを開発しました。
QTISでは、スキルシートを起点にAIが一次分析を行い、現時点での人材理解を整理します。
その分析をもとに、本人への事前アンケートを作成。回答結果を加えて分析を更新し、さらに面談で深掘りしたいテーマや質問を整理します。
面談では人が本人と対話し、そこで得られた情報や所感を記録します。その内容を再びAIによる分析に反映し、人材理解を更新していきます。
一度の分析で人を判断するのではなく、対話を重ねるたびに理解を深めていく仕組みを目指しています。
HOW IT WORKS
AIと人が、それぞれの役割を担う
現在のプロトタイプでは、次のような流れで人材理解を進めます。
- スキルシートを登録する
- AIがスキルシートを一次分析する
- AIが理解を深めるための事前アンケートを作成する
- 本人がアンケートへ回答する
- AIが回答を含めて分析を更新する
- AIが面談で深掘りしたいテーマを整理する
- 人が1on1を行い、対話の内容や所感を記録する
- AIが面談内容まで含めて人材理解を更新する
- その後も1on1などの情報を追加し、継続的に理解を深める
AIは、情報の整理・分析・構造化、仮説の提示、質問や面談観点の整理を担います。
一方で、人は本人との対話やフィードバック、そして最終的な判断を担います。
また、AIによる分析ではTAQT Frameworkを中心としながら、必要に応じてJSTQBやIVECなどの知識を補助的に参照しています。
DESIGN
評価するAIではなく、人を理解するためのAI
QTISの目的は、AIだけでエンジニアの価値を決めることではありません。
スキルシートに書かれている事実から仮説をつくり、分からないことを明確にし、本人との対話を通じて理解を深めることを重視しています。
AIが人を評価するのではなく、人が人をより深く理解するためにAIを使う。
エンジニア一人ひとりの強み・価値・可能性を理解し、その後の育成や配置・アサインなどに活かせる状態を目指しています。
FIELD TEST
実際のエンジニア面談で試してみる
構築したプロトタイプは、実際のお客様支援におけるエンジニア面談でもPoCとして活用しています。
これまでTAQTがスキルシートを読み、経験やスキルを分析して面談で確認したい質問を整理するまでには、20〜30分程度かかっていました。
QTISでは、この一次分析と質問候補の作成を1〜2分程度で行えるようになりました。
また、複数名のスキルシートを対象に、QTISによる分析とTAQT自身による手動分析を比較しながら調整を重ねた結果、現時点では分析結果や質問についても、手動で行う場合と遜色のない質と量を得られる状態になっています。
LEARNING
個人の経験から、再現できる仕組みへ
時間短縮と同時に見えてきたのが、再現性です。
これまでは、スキルシートから何を読み取り、何を質問するかは、QAエンジニアを見るTAQT自身の経験や知識に依存していました。
その観点をTAQT Frameworkとして整理し、QTISが同じプロセスで分析することで、利用する人によらず一定の観点から一次分析と質問候補を得られるようになりました。
「詳しい人が見る」ことに依存していたプロセスを、組織で活用できる仕組みに変えられる可能性が見えてきています。
CURRENT STATUS
人を理解するためのAIとして、検証を続ける
QTISは現在もPoCの段階です。
一次分析や質問作成では、時間短縮と再現性について一定の手応えが得られています。一方で、QTISの目的は、AIだけでエンジニアを評価することではありません。
AIが仮説や問いをつくり、人が本人と対話する。その対話から得た情報を再び蓄積し、次の対話ではさらに理解を深めていく。
AIが人を評価するのではなく、人が人をより深く理解するためにAIを使う。
実際の支援の中で試しながら、人材理解や育成、配置・アサインなどにどのように活用できるか、検証を続けています。